2009年12月25日金曜日

キリスト・ミサ記念SS

この物語はフィクションですか?


「聖なる夜にはすべての人の元に奇跡が起こる」そうな。本当なのかね


一人で町を歩いていた。
なんのことはない普段どおりの行動だ。
ただ、先程から視界に入ってくる赤と白が目に痛い。
きっと赤色が攻撃色だからだろう。きっとそうに違いない。
なんだかもの悲しくなってきたので早めに帰路に着く。職種の関係で幸いにも今日と明日は休日だ。

自宅に帰ると見慣れないものがあった。果たして俺はいつ等身大のフィギュアを買ったのだろうか。あるいはアイドルのポスターかもしれないが、自室の壁に画鋲はささらない。
・・・まさか巷で噂(?)の抱き枕カヴァーというやつだろうか。

「お帰り。意外と早かったね。やっぱり独り身にはにぎやかな雰囲気は毒なのかな?」
おお、最近の抱き枕は声もでるのか。
そんなわけがない。あれはどう見ても三次元の産物だ。その証拠に暖房設備のない(熱に弱い貴重品が大量にあるので)この部屋で白い吐息が出ているのが見える。しかし、俺には母親以外に家に来るような女性はいないはずなのだが。
「誰だおまえ?なんで俺の部屋にいるんだ。そもそも鍵はどうした」
「質問は一つずつにしてもらえないかな」
横柄な態度で俺に近づきながら言った。なんとも言えない怪しさを感じ取った俺は対応を切り替えることにした。
「わかった。質問を変えよう。今すぐ出て行け」
「私の国ではそれは質問ではなくて命令と呼ばれる類の発言ですニャー」
なんだこいつは。
ふざけた態度に俺の堪忍袋の尾も切れた。完膚なきまでに。
こうなったら実力行使だ。本来女性相手に拳を握ることは男の恥だが、相手が不振人物となれば話も別だ。俺は女の肩をつかんで玄関の方に叩きだそうとした。だが、俺の手が女の肩に触れる直前に、相手は視界から消えていた。視覚には視界の端に女の細い足首だけが見えた。
「・・・あ、このアングルだとスカートの中身見えちゃうかも。ま、いっか」
あいかわらずのふざけた態度のままで、ぶら下がるわけでもなくふわふわと中に浮いている。
「・・・なんだお前。妖怪かなにかか?」
だが俺はどうじない。祖父の影響でちょっとした霊感に加え奇妙な経験がやたらとあるこの身に、この程度の非現実はたいした影響を及ぼさない。意識して少し悲しくなった。そういえば同年代で一番親しくなった女性はいつぞやのかまいたちかも知れない。最も向こうの見た目など信用できたものではないが。
「あ、やっぱりあんまビックリしないね。ちょうどいいからそのまま聞いて」
「うるさい。今すぐ出て行かないなら・・・」
「まあそう言わずに。クリスマスなんて若人のビッグイベントに独り身可愛そうな青年さん」
痛いところを突いてくる。だがやつは口を滑らした
「お前、そんな格好をしているが結構年いってるだろ」
「酷い!こんなピチピチの女の子捕まえてそんなこ・・・」
「まただ。最近の若い女はそんな風にしゃべらん。まして若人なんて日常会話にもでてこんわ」
一瞬にして女の表情が苦いものに変わった。やはり俺の予想は当たっていたようだ。
「・・・まあ、いい。ただの馬鹿じゃあ騙すこっちも面白くない。そも、夢魔に年などあってないようなものだからね」
「いきなり本性さらすなよ年増。こっちが情けなくなってくるぜ」
「それはさておいて。君が独り身であることに変わりはない。そこで提案があるわけだが」
大体予想はついたが、ここはテンプレート通り聞き返してやることにした。なんだ?、と
「いいことしてあげる(はぁと)だから、魂ちょーだい」
何も知らないまぬけな男ならコロっと騙されるに違いない。事実、若干来るものがあった
「断る。なにが悲しくて聖夜に悪魔とまぐあわなきゃならんのだ」
「あ、まだ具体的なこと何にも言ってないのにかってな想像してる。なんだかんだ言ってやっぱり色々溜まってるのね。このご時勢に可愛そうな人」
やかましい。好きでこうなったわけではない。というか俺自身特に面食いなわけでも無いのに何故こうも女性に縁がないのか不思議に思っているくらいだ
「今なんで自分がもてないのか考えてたでしょ。顔にでてるよ顔に」
「なんだ。何か原因があるとでもいいたそうな顔だな」
「あちゃ、こっちも顔にでるタイプだったのか。まあいいや。単刀直入に申し上げましょう!ずばり、あなたは今後一生特定の異性と懇意になることはありません!あ、異性っつても犬猫とかは別だから安心してね?」
・・・ナニをどう安心しろと言うのか。いまとんでもない話を聞いて混乱している最中なのに
「・・・どういうことだ。分かるようにいえ」
「原因はあなた個人に掛けられた呪いの一種です」
なるほど、さっぱりわからん
「あなた、生活に不自由したことないでしょ?あなたの家がそこそこ裕福なのはあなたのひいお爺さんが資産家だったことに起因するんだけど、お爺さんがどうやってお金持ちになったかしってる?」
聞いたことがある。ひい爺さんは色々な事業に手を出していて、なぜかほとんど外さなかったがために一時巨万の富を築いたと。だが敗戦で多くを失い少し金の余ってるにわか成金程度に落ちたとも聞いた。
「戦争というイレギュラーはともかく、あなたのお爺さんは何故大儲けできたのか。情報社会に生まれ育ったあなたたちにはちょっと想像し辛いかもね。当時は連絡を取る方法なんてあまりなかったから、周りのライバルの様子とか、外国で流行っているものとかの情報はとにかく手に入りにくかった。それを補うためにお爺さんはある手段を用いた。それが」
なるほど、もうその先は俺でも予想できる。つまりこいつとの
「そう、私との契約。商業上有利な情報を与える報酬に私はあるものを要求した」
「夢魔の要求なんてたかが知れてるけどな」
「そう思われることが分かっていたから、少し趣向を凝らすことにした。私が彼に求めたのは、彼の子孫一人の人生そのもの」
つまりそれが俺か。だが人生そのものとは一体・・・
「ただし生まれてすぐ殺すとか、そういう奪い方ではなく。私の狙いは生きることの喜び。先ずは光を半分。それから食欲」
すぐに合点がいった。生来俺の片目は物を捕らえられず、そしてコーヒーのブラックとココアの違いが分からないほどの味おんちだ。世間一般では味覚障害と言うのかもしれないが
「そして成長していく過程での喜び。幸福の反復厚意・・・つまりは夢をみれなくした。次いでお前にはそれなりの才があることが分かったので、逆にソレが目立つことのないよう調整した。例えばお前の苦手な問題を選んで試験に配置するよう教師をいじったりとか、まあ色々とな」
だんだん口調が素になってきているな。どうせ後で始末をつけるいから俺には聞かれても問題ないということだろうか
「そして。ヒトの最大の喜び、この世においてお前らのなすべき最大の目的を阻むことにした。すなわち」
なるほどね。道理で俺は魔法使い候補を爆進中なわけだ
「・・・異性との関わりを極端にすくなくした。つらかっただろう?本能的に異性に好色の目で見られることを望んでいたのではないか?だがそれも今日でおしまいだ。最後に私がお前に最高の喜びを教えてやる。そして絶頂に達したその瞬間。熟れきったその魂、私が奪ってやろう。悪い話ではあるまい?」
なるほどね。いろんな意味で食われて俺の人生ゲームエンドってわけか。なんだかそれでもいい気がしてきたな。だがこういう展開はありがちだからオチも読める。
「そうか、つまり俺が接触できる異性はお前だけなんだな」
「・・・なるほど、考えたこともなかったな」
やはり。こいつは墓穴を掘ったな。異性との触れ合いが少なかったことが俺をギャルゲに走らせたがその経験はこうして活かされるわけだ。まあ現実にこんな展開があるとは思わなかったが。
「なら話は早い。俺と付き合わないか?今日は聖夜だ、悪魔にだって間違いがあってもいいだろう?」
「い、いきなりナニを言い出すんだ!?私はそんなつもりは・・・」
もらったな。実年齢は定かではにあがかなりの美人であることに違いは無い。どうやら不幸続きだった俺にも運が向いてきたらしい。最もその不運の原因は目の前のコイツなんだが
「・・・だめか。それなら
「ああ、駄目だね」
・・・首筋をつめたいものが走る。なんだ、俺の予想と若干反応が違う気が・・・
「言っただろう、最後に少しばかり幸せをやろうと。どうだ、何年も何年も平面の女と夢に描いてきたシチュエーションが現実になった感想は?・・・悪魔のトゥルーエンドは少々刺激的だがな!」

こうして聖夜の奇跡は見事不幸な青年の下に舞い降り、彼の夢は現実のものに相成りましたとさ、ちゃんちゃん

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